執筆者の敬称などは省略させていただきます。ご了承下さい。

「日経マガジン」 2009年1月号 No.66 【小島 充】
「MOVIE MUSIC BOOK」コーナーで【5 best of the month】 に選ばれました。
 「ピアノの詩人」ことショパンには珍しい、チェロとの2重奏曲。
ピリオド(作曲当時の仕様)楽器の組み合わせによる演奏で、澄んだ音色と繊細な表現が何とも魅力的だ。
 1曲目「序奏と華麗なるポロネーズ」の冒頭から、軽快に駆け上がるフォルテピアノと柔らかなチェロが幸福な雰囲気をもたらす。
現代の楽器ほど音量や迫力がない分、音本来の魅力が存分に味わえる。金属でなくガット(動物の腸)弦を張ったチェロの音は透明感にあふれ、強奏では直に心に届く真実味がある。ロマン派の扉を開けた作曲家の情念が余すところ無く表出される。
 人気歌劇のアリアに基ずく「グランド・デュオ・コンセルタント」では高音の主題を朗々と歌い上げ、作曲家が聞いた音に迫ろうとするエネルギーが伝わる。

 平井のフォルテピアノも抑制された響きから、繊細でかわいらしい味を醸し出す。時々ふっと漂う寂しさもまた魅力的だ。
 「ピアノとチェロのためのソナタ」は友人のチェロ奏者との共同作業から生まれた曲の成り立ちにふさわしく、どちらが出過ぎることもなくお互いを尊重しあう。
 2人の手による丁寧な楽曲解説も作品の理解を助ける。
 鈴木は長年パートナーを組んだ名フォルテピアノ奏者、小島芳子が2004年に急逝(享年43)した後にデュオの録音を休止。小島の弟子に当たる平井と新たにコンビを組み、本作が2枚目となる。世界的演奏団体などで豊富な経験を持つ鈴木が後進を温かく見守るような演奏には大家の風格が漂う。

このページの先頭へ
「季刊 AUDIO BASIC Vol.49」 2009年1月1日 発行 【貝山 知弘】
「Classical High Quality Sound Disc」の【Music 部門】で紹介されました。
 このディスクを初めて聴いた時、なんと穏やかで柔らかな音だろうと思った。
鈴木が弾くチェロ、グァダニーニ(1759年)のこなれきった美音が優しく響き、平井千絵の弾くフォルテピアノの素朴な響きがチェロと絶妙の調和を聴かせる。
ショパンの曲ではありがちな、華麗な演奏、張り詰めた音とは対局の世界がここにはある。
ライナーノートで、オリジナルのままの譜面だと知って、より興味を抱いた。
最後の曲で平井が楽器を変えた効果は、きらめくような高音の輝きに現れていた。

このページの先頭へ
「季刊・オーディオアクセサリー」 2008年 WINTER 131号 【山之内 正】
「高音質で魅力的なSACDをご紹介」の【最新マルチchソフト完全試聴レポート】で紹介されました。
同じ曲を現代のピアノとチェロで演奏したら、これほど自然に両者の響きを溶け合わせるのは難しいだろう。
2つの楽器の関係がバランスを崩さないことは、たとえピアノが低音部で強い音を連打しているフレーズでもチェロの旋律が静かに持続している様子からもうかがえる。
この絶妙なバランスは、ステレオ再生では時折不安定になるが、マルチchでは終始均衡を保っている。
2008年7月ファルテルモント、オンデア・デ・リンデン(オランダ)で収録、5ch。

このページの先頭へ
「季刊・オーディオアクセサリー」 2008年 WINTER 131号 【貝山 知弘】
「12人の評論家が選ぶ 今季の優秀盤オーディオグレード」の【推薦盤】に選ばれました。
『ショパン:ピアノとチェロのための作品集』を聴いた時に抱いたのは「なんと自然で美しい音か」と言う感慨だった。鈴木秀美が弾くチェロの名器グァダニーニ(1759年作)のこなれきった美音が心に優しく響く。
平井千絵の弾くフォルテピアノの素朴な響きが、チェロの響きと絶妙の調和を聴かせる。彼らが使っているのはオリジナルのままの譜面だ。

このページの先頭へ
「CDジャーナル」 2008年12月号 【田中 明】
「新譜試聴記」で【イチ押しCD】 に選ばれました。
メンデルスゾーンも良かったけれど、このショパンも素晴らしい。鈴木秀美のチェロは、もちろんうまくて文句はないが、平井千絵のピアノが素晴らしく美しい。
 楽器や録音のせいもあろうがフォルテピアノの特性を血肉と化したかのようだ。
 文句なしの1枚。

このページの先頭へ
「レコード芸術」 2008年12月号 【高橋 昭、大木 正純、歌崎 和彦】
「新譜月評」の【室内楽曲部門】で選ばれました。

《準推薦》 高橋 昭
 さまざまな性格を持ったロマン派の作品を、ピリオド楽器で演奏したCDである。
ショパン = フランコームが共作した「マイアベーアの歌劇 《悪魔のロベール》 の主題による大二重奏曲」は以前にビルスマとオーキスによる録音があったが、それも10数年以前のことであり、この形での新録音の登場は歓迎されよう。
 冒頭の 《序奏と華麗なるポロネーズ》 からフォルテピアノの軽やかな響きとチェロのどちらかと言えば「くすんだ」音色が結びついた独特の魅力を生み出す。 モダン楽器による演奏とは力関係が明らかに異なり、一方が他方を圧倒することがなく、響きがよく溶け合っていることも演奏の一体感をたかめている。
 チェロ・ソナタでもこの関係は変わらない。フォルテピアノが、低域から高域に移行する際に音色と響きが密やかに変化するのが音楽に魅力を与えているし、平井の解釈も簡素な主題から豊かな魅力を引き出している。鈴木も熱の入った演奏で、ショパンのロマン的な性格を十分に生かしている。
 「 《悪魔のロベール》 の主題による大二重奏曲」 では、2つの楽器が協奏する時にはチェロの張りのある音とフォルテピアノの落ち着いた響きが結びついて美しい演奏が聴かれる。
 ツェルニーの 《ロンド・コンセルタント》 は初めて聴く作品だが、主部に入ってチェロの張りのある音が旋律に昂揚感をもたらしている。
 なおフォルテピアノは ツェルニーの作品にウィーン製の楽器(1825年頃製)を、それ以外の作品ではプレイエルの楽器(1840年製)を使っているが、この選択は作品の様式を再現する上で効果を上げている。

《準推薦》 大木 正純
 鈴木と平井によるピリオド楽器使用のロマン派アルバムとしては、数年前のメンデルスゾーンに続くもの。演奏される機会の少ないメンデルスゾーンに比べれば、今回のショパン作品はよほどお馴染みだが、楽器が楽器だけに通常のディスクとはまるで異世界である。
 まず、《ポロネーズ》 では、プレイエルの楽器を使ったピアノ・パートに、サロンで演奏するショパンその人の姿に思いを馳せさせるものがあって楽しい。チェロ・パートは後付の飾りを取り去ったオリジナルに立ち戻って、すっきりさわやかな印象。
 一方ソナタは、一転してシリアスなタッチのきわめて充実した演奏だ。抽象的な言い方になるが、ショパンがチェロという楽器に託した美への思いを、少しもあざとくない形で十全に伝える。第1楽章終盤や終曲で白熱のデュオが盛り上がるときも、腕力むき出しのパワー対決にならないところはピリオド楽器の良さである。
 次はフランコーム(フランショーム)との共作。自作にはびっくりするほど趣味の悪い曲もあるフランコームだけに、このチェロ・パートも上出来とは言い難い。しかし奏者二人の力がものを言って、演奏はなかなか聴かせる。
 最後のツェルニーは驚きの珍品だ。少なくとも前述の共作よりははるかに音楽的なグレードが高い。ポロネーズ調の楽想も含めてショパンの前述 《ポロネーズ》 に非常に良く似ており、両者はどこかでつながっていたものと思われる。

《録音評》 歌崎 和彦
 少し近い感じはあるが、ふたつの楽器のバランスはよく、こまやかな表現も十分明快に伝えるが、フォルテピアノの音像は少し甘く、中高域の明るさが声高な印象を与えることもある。2chは各要素が向上して、音像もひき締まり、中高域の張りも取れて、演奏がよりしなやかな持続力や切れ味を増し、呼応感や一体感が無理なく伝わる。

 マルチchはレンジがさらに拡大するとともに、より広い空間にふたつの楽器がぴたりと定位して、全体と細部をバランス良く見通せるし、音色も向上して、弱音でのこまやかな表現が味わい深い。 〈90/92〜94〉

このページの先頭へ
「CDジャーナル」 2008年12月号 【那須田 務】
Music Eye「ショパンに新たなアプローチ」で紹介され、【”今のショパン”を知る10枚】に選ばれました。
プレイエル・ピアノ(1840年製)で奏でられるふわりとしたパッセージにうっとり。
チェロは情熱的で味わい深く、両者の理想的な音量のバランスや色彩は現代楽器では得られない。
これらの曲の魅力を再発見することだろう。ピリオド楽器の名手2人による共演。

このページの先頭へ
「ぶらあぼ」 2008年12月号 【柴田 克彦】
「今月の新譜 ぴっくあっぷ」 の 【一聴 必聴 このCD&DVD】 に選ばれました。
 ピアノ作曲家のチェロ曲集。これは示唆に富んだ1枚だ。
ショパンの「ポロネーズ」は珍しいオリジナル版(化粧前の素朴さが愉しい!)であり、「グランド・デュオ」は録音も少なく、 ツェルニー作品はレアそのもの。
これらをピリオド楽器で聴けるだけでも価値は高いし、演奏自体も実に味わい深い。
面白いのは、ショパンをパリのプレイエル、ツェルニーをウィーンのベーム製のピアノで弾いていること。
この音あっての音楽かと実感させられ、ショパン作品もモダン・ピアノで見逃していたチェロとのコラボの意味を思い知らされる。

”百聞は一聴に如かず” でぜひ!

このページの先頭へ
「朝日新聞」 2008年11月13日 【岡田 暁生】
for your Collection 【クラシック音楽】で【特選盤】に選ばれました。
主役は1840年製のプレイエルピアノ。高音の煌めき、チェロとの驚くような立体感、とろけるカンタービレ。ツェルニーの小品も粋の極み。19世紀サロンの夕べを満喫できる。
          (選者は岡田暁生、片山杜秀、金澤正剛、喜多尾道冬、の4氏による合議)

このページの先頭へ