「ショパン」 2009年9月号
萩谷 由喜子


      2009年6月14日に 東京オペラシティ 近江楽堂 で開催された
             「ウイーンのピアノに魅せられた作曲家達 Vol.4」
             【モーツァルトのピアノで織りなすファンタジー 幻想】 
          平井千絵 フォルテピアノ リサイタル Vol.4 の演奏会評です。
 なお、執筆者の敬称などは省略させていただきます。ご了承下さい。

        【演奏曲目】 
ハイドン :
幻想曲(カプリッチョ) ハ長調
* J.S.バッハ :
半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
** カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ :
自由な幻想曲 Wq 67 嬰へ短調 "C.P.E.バッハの感情"
ベートーヴェン :
幻想風ソナタ 作品27の2 「月光」 嬰ハ短調
モーツァルト :
幻想曲 ハ短調 K475
ピアノソナタ ハ短調 K457
   * 夜公演のみ  ** 昼公演のみ
 

  フォルテピアノの特性を存分に
  平井千絵
  フォルテピアノ リサイタル

 オランダのデン・ハーグ王立音楽院古楽器科でフォルテピアノを学び、現在も同地に在住して意欲的な演奏活動を展開中の平井千絵が昼夜2回公演でリサイタルを開催した。

 彼女のリサイタルの魅力のひとつは、プログラムに明確なテーマ性があること。

今回は「ファンタジー/幻想曲」がテーマ。古典派3巨匠の幻想曲を軸として、昼公演ではこれにC.P.E.バッハの『自由な幻想曲』が、夜公演では父バッハの『半音階的幻想曲とフーガ』がとりあげられた。

 筆者が聴いたのは夜公演。
1曲目のハイドンの幻想曲(カプリッチョ)ハ長調からして、早くもダイナミクスのレンジの広さと音色の多彩さに耳を奪われる。
『半音階的幻想曲とフーガ』は強い集中力のもと一気に弛緩なく流れる。各声部は独立性を保ちながら、縦横斜めに絡み合って神々しいような幻想曲が醸されていた。

 前半にもう1曲、ベートーヴェン自身が『幻想曲風ソナタ』と呼んだ通称『月光ソナタ』。 ここでは第1楽章にモデレーターが使われ、ダンパーは終始あがったままの状態。 フォルテピアノだから出来るこのワザ。 そこから立ち昇る天国的な弱音もこれまたフォルテピアノならではだ。 第2楽章に移ったとき音の輪郭が一変し、その効果に瞠目。

 後半はモーツァルトの幻想曲ハ短調 K475 と ソナタハ短調 K457 のセット。 前者がすばやい上行楽句で結ばれるや、ただちにアタッカで後者が開始される その間合いの良さ。 楽曲は生命あるもののようにしなやか。

 音楽には人格が宿っていた。
(萩谷 由喜子)      

            (6月14日 東京オペラシティ3階 近江楽堂)

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