「レコード芸術」 2008年12月号
高橋 昭
大木 正純
歌崎 和彦


 2008年10月22日にリリースされたCD 「ショパン : ピアノとチェロのための作品集」 が12月号の
 「新譜月評」の【室内楽曲部門】 で 選ばれました。
 なお、執筆者の敬称などは省略させていただきます。ご了承下さい。

ショパン/チェロとピアノのための作品集
 @ ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
 A ショパン:チェロ・ソナタ
 B ショパン&フランコーム:マイアベーアの歌劇 《悪魔のロベール》 の主題による大二重奏曲
 C ツェルニー:ロンド・コンセルタント


《準推薦》 高橋 昭
 さまざまな性格を持ったロマン派の作品を、ピリオド楽器で演奏したCDである。
ショパン = フランコームが共作した「マイアベーアの歌劇 《悪魔のロベール》 の主題による大二重奏曲」は以前にビルスマと
オーキスによる録音があったが、それも10数年以前のことであり、この形での新録音の登場は歓迎されよう。

 冒頭の 《序奏と華麗なるポロネーズ》 からフォルテピアノの軽やかな響きとチェロのどちらかと言えば「くすんだ」音色が結びついた独特の魅力を生み出す。 モダン楽器による演奏とは力関係が明らかに異なり、一方が他方を圧倒することがなく、響きがよく溶け合っていることも演奏の一体感をたかめている。

 チェロ・ソナタでもこの関係は変わらない。フォルテピアノが、低域から高域に移行する際に音色と響きが密やかに変化するのが音楽に魅力を与えているし、平井の解釈も簡素な主題から豊かな魅力を引き出している。鈴木も熱の入った演奏で、ショパンのロマン的な性格を十分に生かしている。

 「 《悪魔のロベール》 の主題による大二重奏曲」 では、2つの楽器が協奏する時にはチェロの張りのある音とフォルテピアノの落ち着いた響きが結びついて美しい演奏が聴かれる。

 ツェルニーの 《ロンド・コンセルタント》 は初めて聴く作品だが、主部に入ってチェロの張りのある音が旋律に昂揚感をもたらしている。

 なおフォルテピアノは ツェルニーの作品にウィーン製の楽器(1825年頃製)を、それ以外の作品ではプレイエルの楽器(1840年製)を使っているが、この選択は作品の様式を再現する上で効果を上げている。

《準推薦》 大木 正純
 鈴木と平井によるピリオド楽器使用のロマン派アルバムとしては、数年前のメンデルスゾーンに続くもの。演奏される機会の少ないメンデルスゾーンに比べれば、今回のショパン作品はよほどお馴染みだが、楽器が楽器だけに通常のディスクとはまるで異世界である。

 まず、《ポロネーズ》 では、プレイエルの楽器を使ったピアノ・パートに、サロンで演奏するショパンその人の姿に思いを馳せさせるものがあって楽しい。チェロ・パートは後付の飾りを取り去ったオリジナルに立ち戻って、すっきりさわやかな印象。

 一方ソナタは、一転してシリアスなタッチのきわめて充実した演奏だ。抽象的な言い方になるが、ショパンがチェロという楽器に託した美への思いを、少しもあざとくない形で十全に伝える。第1楽章終盤や終曲で白熱のデュオが盛り上がるときも、腕力むき出しのパワー対決にならないところはピリオド楽器の良さである。

 次はフランコーム(フランショーム)との共作。自作にはびっくりするほど趣味の悪い曲もあるフランコームだけに、このチェロ・パートも上出来とは言い難い。しかし奏者二人の力がものを言って、演奏はなかなか聴かせる。

 最後のツェルニーは驚きの珍品だ。少なくとも前述の共作よりははるかに音楽的なグレードが高い。ポロネーズ調の楽想も含めてショパンの前述 《ポロネーズ》 に非常に良く似ており、両者はどこかでつながっていたものと思われる。

《録音評》 歌崎 和彦
 少し近い感じはあるが、ふたつの楽器のバランスはよく、こまやかな表現も十分明快に伝えるが、フォルテピアノの音像は少し甘く、中高域の明るさが声高な印象を与えることもある。2chは各要素が向上して、音像もひき締まり、中高域の張りも取れて、演奏がよりしなやかな持続力や切れ味を増し、呼応感や一体感が無理なく伝わる。

 マルチchはレンジがさらに拡大するとともに、より広い空間にふたつの楽器がぴたりと定位して、全体と細部をバランス良く見通せるし、音色も向上して、弱音でのこまやかな表現が味わい深い。 〈90/92〜94〉

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