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「ムジカノーヴァ」 2008年1月号


      2007年10月17日に めぐろ パーシモンホール 小ホールで開催された
              日本演奏連盟/山田康子奨励・助成コンサート
             「ウイーンのピアノに魅せられた作曲家達 Vol.1」
                   【ヴィルトゥオジテ と ポエジー】 

          平井千絵 フォルテピアノ リサイタル の演奏会評です。
 なお、執筆者の敬称などは省略させていただきます。ご了承下さい。

平井千絵
フォルテピアノ・リサイタル
<シリーズ ウィーンのピアノに魅せられた作曲家たちVol.1>

 桐朋学園卒業後、政府給費留学生としてオランダでフォルテピアノとチェンバロを学び、ブルージュ国際古楽コンクールなどに入賞して、現在はオランダを本拠地としながら国際的に活躍している平井千絵の新シリーズ 「ウィーンのピアノに魅せられた作曲家たちVol.1」 が順調に幕を開けた。

 今回使用された楽器は1825年頃にウィーンで製作された M.ローゼンベルガー。 モーツァルト時代のフォルテピアノより大型だが、アクションはウィーン式で、まだ鉄骨のフレームは入っていない。 
 演奏されたのはいずれも当時のウィーンの音楽で、最初に弾かれたツェルニーの 《旋律的エチュード》 が始まった瞬間から、軽やかで柔らかい、えもいわれぬ典雅な響きが会場いっぱいに広がった。 この曲はいわゆる練習曲スタイルではなく、ペダルで混交された柔らかい弱音の分散和音の上で旋律が歌われるという、メンデルスゾーンを思わせるロマンチックな作品だが、現在のピアノでは決して得られない木質系の響きが自然であるだけでなく、このピアニストの音楽の呼吸がきわめて自然で、多少扱いにくいはずの楽器が完璧にコントロールされ、趣味の良い響きが確実に選ばれているレベルの高い演奏だった。

 続けて 「バッハのフーガの技法」 より第1,第9フーガ(ツェルニー編)、ベートーヴェン 《ソナタ第31番》、 シューベルト 《ソナタ イ短調D845》 が弾かれたが、どの曲も自然なテクニックと音楽性で細部までていねいに弾き込まれ、集中力の高い演奏が続いた。
 ルバートやアゴーギクの自然さもさることながら、重音や分散和音など音の多いテクスチュアで適切に音を重ねて美しい響きを醸していたことは、彼女が古楽に限定されない、良い耳と作品に対する誠実さを備えた優れた奏者であることを示しているだろう。

 アンコールで弾かれたショパンの 《アンダンテ・スピアナートと大ポロネーズ》 は多少暴走気味だったが、それがどう発展していくかも含めて、ベートーヴェン、フィールド、ウェーバー、ショパンと続くこのシリーズを楽しみにしたい。

                          (10月17日・めぐろパーシモン 小ホール)
(岡田 敦子)     

        【演奏曲目】   
チェルニー :
旋律的エチュード 作品795−3
バッハ・チェルニー編 :
フーガの技法より  第1フーガ、 第9フーガ
ベートーヴェン :
ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
シューベルト :
ソナタ イ短調 D845